2021年03月15日
選択的夫婦別姓反対の陳情は不採択
2月定例岡山市議会が閉会しました。党市議団は全108議案中、介護保険料値上げなどの22議案に反対しました。
私は陳情への討論に立ち、選択的夫婦別姓に反対する陳情は、不採択23、採択17、退席3で、不採択になりました。
以下に討論の内容を載せます。
日本共産党岡山市議団を代表し、陳情に対する討論を行います。今回は、陳情第1号 市長の専決処分事項の指定の見直しを求めることについて と 陳情第6号 選択的夫婦別姓制度の法制化に反対する意見書の提出について の陳情を採択しないことを求めます。
また陳情第3号 コロナ禍における保育園幼稚園のこども園化・民営化の一時停止を求めることについて と 陳情第8号食育の基本である学校給食は、単独自校調理方式を基本とするよう求めることについて の陳情は、採択することを求めるものです。
陳情6号は選択的夫婦別姓に反対する内容です。
選択的夫婦別姓とは、夫婦が同姓にするか別姓にするかを自由に選ぶことができる制度です。今の日本では、結婚するなら同姓にすることしかできません。姓を変えるのはほとんどが女性で、9割を超えています。姓を変える不都合や不利益は女性に集中するという実態になっています。憲法の男女平等の原則にてらし、ただすべきものです。日本は「女性差別撤廃条約」を批准していますが、国連女性差別撒廃委員会から夫婦同姓が「差別的な条項」だと再三削除を勧告されてもいます。
2015年9月に閣議決定された答弁書では、夫婦同姓を法律で義務づけている国があるかという問いに対し、「現在把握している限りにおいては…『法律で夫婦の姓を同姓とするように義務付けている国』は、我が国のほかには承知していない。」としています。夫婦同姓しか認めない弊害は、日本特有の問題です。
陳情本文では姓を変える不都合について「ほぼ解消することが可能」としていますが、法務省HPでは「(1)代々受け継がれてきた氏を大切にしたいという感情を持つ人が増えていることから,一人っ子同士の結婚のような場合に,氏を変えることが事実上結婚の障害となったり,(2)結婚に際して氏を変えることによって,本人の同一性が確認できなくなり,職業生活上不利益を被るといった事態などが生じています」とあります。名前を変える側にとっては、それまでの人生を捨てることになると感じる人がいるのです。個人のアイデンティティにも関わることであり、一人ひとりが自由に姓を選べるようにすることが必要です。
陳情本文では、「家族の絆や一体感を危うくしてしまうおそれがある」「子どもの福祉にとっても悪影響を及ぼすことが強く懸念されています」としています。しかし根拠はありません。姓を理由に子どもの福祉に差が出ることなどあるでしょうか。あればそれこそ憲法違反です。保健福祉・協働委員会の審査の中では、選択権のない子どもが被害をうけるのではといった懸念も出されましたが、子どもが自己決定できるときにどの姓を名乗るか改めて決めれば問題にはなりません。
また、2017年12月の内閣府の世論調査によると、「一体感(きずな)には問題がないと思う」との答えが64.3%です。陳情での懸念は杞憂に過ぎるものです。
なお、日本における夫婦同姓は、日本古来の伝統かというとそうでもないようです。日本の歴史では、室町幕府8代将軍・足利義政の正室の日野富子など、父と同じ名字でよばれた人物が出てきます。平民に苗字を認めた明治維新後でも、1876年(明治9年)太政官指令では、妻は実家の氏を用いることとされています。夫婦は別の氏だったのです。夫婦が同じ氏を名乗ることになったのはその後の1898年(明治31年)で、現行の夫婦同姓は1947年(昭和22年)です。夫婦同姓の歴史は74年、夫婦同氏と合わせたとしても120年程度の歴史です。それ以前の、夫婦同姓が法制化されていない時代において、本陳情で言われている「家族の絆や一体感の維持と子どもの健全育成」に困難があったのか、私の調べた範囲では知ることができませんでした。
選択的夫婦別姓について、一人ひとりの生きづらさに目をむけて考えていくことが必要です。陳情第6号は3月9日の保健福祉・協働委員会で不採択になりました。本会議でも不採択にされるよう、お願い申し上げます。
陳情第3号は、岡山市がすすめる市立幼稚園・保育園の民営化やこども園化について、せめてコロナで人が集まることに困難がある間は十分な話し合いができないから待ってほしいという陳情です。
陳情本文では「新型コロナウイルスが蔓延しており、各園では感染のリスクを下げるため、3密を避けて保護者が大勢集まる行事等は原則的に行われていません。保護者や地域住民を集めての説明会や話合いができない状況下で、各園のこども園化・民営化を進めることは保護者や地域住民として本意ではありません」としています。
市立幼稚園・保育園は、地域住民が毎朝の交通整理をしたり、もちつきや豆まきなど行事をいっしょにやったり、みんなで守ってきた施設です。その園が今後どうするかは、幅広い話し合いで合意を取りながら決めていくべきものです。知らないうちに決まってしまっていたということがあってはなりません。しかし、多くの地域住民や保護者にとっては、自分のところの園がこれからどうなるか、何を計画しているのか、知らされていないままではないでしょうか。それどころか、今議会の子ども文教委員会では、竜操中学校区の財田(さいでん)幼稚園、財田保育園、乙多見(おたみ)保育園、神下(こうじた)保育園を統合園にして、財田スポーツパークの場所に建てるという計画になっていることを、議員にすら知らせていなかったことが明らかになりました。コロナ禍にあって加速する計画の進行は、議会軽視の心配をしなくてはならないレベルに達しています。
市は、市立幼稚園・保育園の廃止民営化や認定こども園化の説明について、十分に感染対策をとっていると言います。しかし話をするべき対象は、感染リスクの高い高齢者が多い地域住民であったり、自分や子どもの感染に神経質にならざるをえない保護者だったりします。十分な話し合いを行う環境にはないと考えます。
よって陳情第3号は採択すべきとうったえます。
陳情第8号は、学校給食について、巨大給食調理センターでなく、それぞれの学校で調理することを求める陳情です。
岡山市は、学校給食の集約化が必要だと、中区赤田の給食センターを中区海吉に2025年稼働開始をめざして建て替える計画です。新年度予算案に用地の取得費が計上されています。新たに7中学校に配食することを想定し、現在の2500食分を7000食程度にする案が出ていました。また市は全ての中学校で給食の自校調理をやめてセンター方式に変える方針も示しています。それどころか今議会ではさらに7000食を7500食分に増やすといってきました。
これほど大きな計画なのに、保護者や地域への説明会は2023年度からだといいます。あまりにひどい説明不足で、容認できません。
陳情本文では、「岡山市の自校方式による学校給食の提供は、大規模な感染症を発生させた過去の過ちを教訓に、各調理場への栄養職員配置や徹底した衛生管理とともに、地元生産者との連携による地産地消など各校の規模だからできる施策を充実させてきました」とあります。全国的には、巨大給食調理場でのコロナ感染などで給食が提供できなくなる事例が起こっています。また地場産農作物の使用は、確保しなくてはならない量が増えるのでますます困難になります。
巨大給食調理センターの配食校の候補に、南区の福南中学校があります。距離は約10キロ。作ってから相当な時間が過ぎた給食を食べることになります。
この福南中学校が昨年出した学校新聞32号では、給食をつくってきた調理員さんに卒業生がメッセージカードで感謝の気持ちを伝えたという記事が載っています。中学生が部活の朝練に出ると、調理員さんも朝早くから仕事に来ているので、あいさつをするようになり、卒業に際して、今までのありがとうの気持ちを伝えようということになったからだと聞きました。自分の学校で給食を作ることは教育そのものです。
作ってくれる人たちを間近に見ながら感謝の気持ちを育てること、そしてそれぞれの学校で作ったできたてを食べることが、子どもたちの心と身体を育てる最善の利益ではないでしょうか。
学校給食は自校調理を維持すべきと考え、陳情第8号の採択を求めます。
以上です。みなさんのご賛同をお願い申し上げます。
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